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Japan Pavilion: 15th International Architecture Exhibition 2016 – Venice Biennale

インタビュー12 - レビ設計室

「縁(en)」というテーマについてどのように考えて参加されたのでしょうか。

伊藤|本展のステートメントに「社会は大きな転換期を迎えている」との言葉がありますが、何が転換しているのか。私は「部分と全体の関係」ではないかと考えています。かつての成長期には社会の全体像がイメージしやすく、そこで共有された規範や仕組みを部分に向けてブレイクダウンするという関係が理解しやすかった。しかし現在は、部分からのボトムアップも活況ですし、とはいえ全体の仕組みが力を失っているわけでもなく、その関係性はもっと複雑で、ひとつのイメージでは把握できません。神山町は、日本の「部分の末端」のような町ですが、新しい部分と全体の関係のあり方が感じられる場所です。それを「縁」という言葉で捉え直してみると、より具体的な連関が見えてくるのではないかと思います。

須磨|神山町での活動は極私的な縁の連鎖からなっています。私自身はニューヨーク在住時に妻同士の交流から紹介された坂東幸輔との出会いから活動がはじまり、私を訪ねて神山に遊びにきた高校の同級生はここに惚れ込んで自身の会社のサテライトオフィスを設置し、いまや10数件ある内の1号店です。こうした縁を可視化し、次につながるきっかけ(trigger)を生み出すことがわれわれの役割だと思っています。

坂東|神山町と出会ったきっかけはリーマンショックでした。世界中のどんな設計事務所にでも就職できると思ってハーバード大学を修了しましたが、リーマンショックによりニューヨークで2年間無職を経験しました。古民家に1万円で住めるならバイトをしながら建築家を目指せるのでは、というような思いで神山町を訪れ、その時の出会いが「ブルーベアオフィス神山」の改修に繋がっています。世界的金融危機を体験し、大きな組織に頼るのではなく、自分の手の届く範囲で活動したいと思うようになりました。これまでのやり方では通用しないという私と同じような思いをした人は少なくないのではないでしょうか。転換の兆候は私的な気づきの中にあると思います。

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