タイトル

Japan Pavilion: 15th International Architecture Exhibition 2016 – Venice Biennale
青木弘司建築設計事務所

青木弘司建築設計事務所

「縁(en)」というテーマについてどのように考えて参加されたのでしょうか。

「縁」は、ひとまず「関係性」と読み替えても良いと思うのですが、今回展示する〈調布の家〉は、この「関係性」が重要なテーマになっています。〈調布の家〉はリノベーションですが、過去を標本化するような態度ではなく、それを意味のあるものとして捉え直したいと考えました。つまり、今までの時間も、これからの時間も一元化することなく並存させるために、空間を形づくる、あらゆる雑多なモノを無数の時間の表象として等価に捉えながら、それらの膨大なモノとモノの関係性、つまり、「モノの縁」を緻密に織り上げるように設計しています。この時に住み手は、持続的に空間に関わりながら、その無数の「モノの縁」を再編し、断続的に立ち現れるシーンとして受容していきます。このように、その場の質が人間の主体性によって日々刻々と変化するような、いつまでも瑞々しく新鮮な、冗長性に溢れた空間を設計したいと思っています。

先の見えにくい状況ですが、今を生きる建築家として、どのような創作の主題を設定することができるのだろうかと日頃から考えています。今われわれの実践の舞台は、いわゆる大文字の建築が信頼を失いつつある社会です。ひょっとすると、「縁」というテーマを設定することが、少しナイーブな態度のように受け取られるかも知れませんが、それでも、ざまざまな社会の問題に真摯に向き合うわれわれの実践を俯瞰していくと、今この時代が要求する創作の主題を探り当てることができるはずです。そして、この展覧会を通して浮かび上がった創作の主題から、未来に対して開かれた、建築の新しい自律性が紡がれていくことを、私自身も期待しています。

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